With eternal love

 クライン国で12月に行なわれる降誕祭はかなり大規模な行事である。
 この世界に平穏を与えた女神への祈りを捧げる日。
 この女神は愛と誓約を司る。その為か、この日、女神に誓いをたてた恋人達は、一生を連れ添うと言われている。

「行きます」
行事まで後1週間ちょっと。警備に当る自警団と連携して見まわりの強化に当っていた騎士団にようやく普段の落ち着きが取り戻された。
シルフィスは、レオニスの降誕祭へのお誘いに即答した。
「ではその日、迎えに来る。…待っていてくれ」
「はい」
 今から降誕祭の日が待ち遠しかった。

 去年は、にぎやかな街の中を一人で見て回った。
ランプがまるで光の洪水を起こしたような風景にビックリした事を思い出す。
一人で明りを見ていて「寂しい」と思った事も。
でも、今年は違う。大切な、一番愛しい人が側にいる。
「寒くはないか?」
「大丈夫です」
 シルフィスは、自分を庇うようにして歩くレオニスに笑顔で答えた。
彼女の表情につられたのか、レオニスも笑顔で頷く。
特にこれ、といった予定のない二人は通りに出た夜店を見回った。
珍しい品物を見ては驚くシルフィスにレオニスがその説明をする。
そうして神殿への道程を二人は楽しんだ。

 二人が神殿に着いた頃、静かに雪が降ってきた。
「雪……」
「毎年この日は必ず雪が降る……女神の計らい、かもしれんな」
「祈りのお返しとか?」
「そうかもしれん……シルフィス」
「はい?」
「私はエーベ女神に誓いをたてていた」
「はい」
 彼の過去は聞いている。隠したくない、と本人が話してくれた。
その時何があったのか、彼がどうしたのか、……彼女がどう告げたのか……。
知った上で、レオニスを受け入れた。だから、シルフィスは、レオニスが何を言おうと、黙って聞くつもりで肯いた。しかし、レオニスを正視出来ず、顔を伏せた。
覚悟があろうと……恐い事には変わらない。
「もう1度、この場で誓いたい……女神に罰を与えられようと」
「――――」
 その言葉にシルフィスは顔を上げた。
どこか怯えた表情のシルフィスに、レオニスは柔らかく微笑み――告げた。
「お前に……私の持つ一生の愛情と信頼を捧げる」
 静かに降りしきる雪の中、レオニスはシルフィスを抱きしめ、額に誓約の口付けを贈る。
「私の……妻になってくれないか?」
「レオニス……」
 愛しい男の名前を呼んでシルフィスはそっと彼の胸に顔を埋めた。

―― 二人にとって、その年の降誕祭は大切な想い出となる ――



fin



finish writing  99.12.20