【 伸吾SIDE 】
貰ってばっかりだからな…。
たまには俺からプレゼントするのもいいかなぁって思って、俺は高崎さんと一緒に買い物に出かけた。
「これにすれば?」
やたらめったらファンシーなお店で高崎さんがリングを指差す。
彫ってあった文字は『WITH YOU』
「高崎さん!」
「いいじゃん。じゃあ、こっちは?」
次に指されたのは『Endless Love』って…ここまであからさまなのもなぁ。
だったら…、そう思って、俺はそのリングを一つ一つ手にとって文字を確かめる。
「あ…」
これならいいかも。
「それにするのか?」
「はい」
「うん、良いんじゃないか?山内らしくて」
高崎さんはそういって笑ってくれた。
あまり高いものじゃないけど、喜んでくれるといいな…。
「ただいま、充流?」
「おかえり、伸吾」
パソコンに向かっていた充流は、俺のほうを振り向いて出迎えてくれた。
「充流、これ」
「くれるの?」
手渡してたのは小さなプレゼント。
ピンクのリボンでいかにもオンナノコに、ってプレゼントなんだけど…。
「開けていい?」
「うん…」
充流…気に入ってくれるかな?
充流が丁寧に包装を解く。
中から出てきたものを見て、充流が一瞬止まって、俺に抱きついた。
「ちょ、充流!」
「嬉しい! ありがとう、伸吾」
充流が凄くキレイな笑顔で笑った。
「ねぇ、伸吾。はめてくれる?」
そういって充流が俺にリングを手渡した。
「わかった。充流、手、出せ」
差し出されたのは右手。
充流の手を取って、その薬指にリングを通す。
「これでいいか?」
「これで伸吾と僕は婚約したことになるんだよね」
って、ちょっと待て!
「だってこれ、婚約指輪でしょ?」
「充流ぅ…」
「今度、お揃いのリングを買ってきたら左手にはめ直すね」
そういって、充流は俺の左薬指にキスをした。
【 充流SIDE 】
ここのところ忙しかったネットワークだけど、何故か今日はぽっかりと休養日みたいに用事がなかった。
伸吾はちょっと買い物〜なんて言い残し、ついてくるなよ≠チて顔をして出て行った。
気にはなったけど、むくむく湧いてくる好奇心を押さえつけて、パソコンを起動させ、ファイルの整理なんてやっていた。
「ただいま、充流?」
「おかえり、伸吾」
伸吾が帰ってきたところで手を止めて、出迎える。このデータ処理が急ぎじゃないのもあったけど、何より、伸吾と一緒に過ごす時間を大事にしたいから。
「充流、これ」
可愛くラッピングされた小さな箱。
「くれるの?」
僕が差し出した手に乗せてくれる。
「開けていい?」
「うん…」
僕がどんな反応をするか、こわごわというか、期待しているというか。そんな伸吾の目の前で、ゆっくりと包みを解いていく。
大きさや重さから何となく予想はついていたけど、それでも本物が現れると、嬉しくて……思わず伸吾に抱きついた。
「ちょ、充流!」
「嬉しい! ありがとう、伸吾」
わたわたと慌てる伸吾に、満面の笑顔を向けた。そして、自分でつけようとしたそれを、思い直して伸吾に差し出す。
「ねぇ、伸吾。はめてくれる?」
こうやっておねだりすれば、伸吾が拒否できないことを承知の上で。
「わかった。充流、手、出せ」
戸惑ったのは一瞬で、笑って応じてくれる伸吾に、ちょっと考えて右手を出した。
伸吾が僕の薬指にリングを通してくれる。
「これでいいか?」
「これで伸吾と僕は婚約したことになるんだよね」
伸吾がはめてくれるなら、薬指だって確信してたから。
「だってこれ、婚約指輪でしょ?」
「充流ぅ…」
そんなことは考えてなかったんだってーと表情で語る伸吾に微笑む。
「今度、お揃いのリングを買ってきたら左手にはめ直すね」
伸吾がはめてくれたリングのある右手で伸吾の左手を取り、薬指にキスをした。
あからさまなことをすると恥ずかしがる性格をよく知っているからこそ、今まで指輪を贈ったことはなかったんだ。
でも伸吾からくれたってことは、解禁って思っていいんだよね?
いつ買い物に出かけよう。
伸吾に似合う指輪を早く見つけたい。