目が覚めて最初に飛び込んでくるのは見なれた彼の顔。
朝に弱い彼はいつも僕より遅く起きる。
緩い拘束からそっと体を離して顔を上げれば、彼の寝顔が見れた。
何をする訳でもなく、彼が起きるまでその顔を見つめる。
それが僕の朝の日課。



   

【日課】 〜リヴの場合〜




「……何が楽しいのかな?」
「え?あ、おはよ、ジョウイ」
 いつものようにぼーっと見ていたら、何時の間にかジョウイは目を覚ましていた。
きちんと挨拶をしたら、ずるっとこけられた。……何でだろう?
「あのね……僕は何が楽しいのか聞いたんであって、挨拶をした訳じゃないんだよ?」
「うん、でも、起きたら最初は挨拶だよね?」
「いや、そうだけど……」
 ジョウイはそう言うと、小さくため息をついて僕を見た。
「おはよう」
「うん」
 にっこり、最高の笑顔で言ってくれたジョウイに、笑い返す。
「で、何が楽しいのかな?」
「えっと……」
 何でこだわるんだろう?そんなに変な顔してたかなぁ、僕。
「リヴ」
「……そんなに変な顔してた?僕」
「変な……。リヴ、なんか勘違いして無いかい?」
「え?違うの?」
「君ってば、いつも僕が起きると、ニコニコ楽しそうに笑ってるんだよ。だから、寝ている時に何かあったのかなと思っただけ」
 ジョウイの説明に納得する。なんだ、そうなのか。
「寝てる時じゃないけど…。ジョウイの顔見てただけだよ?」
「僕の?」
「うん。ジョウイ、起きるの遅いだろう?だからその間、見てるだけ」
「―――何で?」
「え?……駄目?」
 なんだか、眉が寄ってるよ?いけない事言ったのかな?僕。
「見てて楽しい?僕の顔」
「うん!」
「……そう?」
「だって、ジョウイ、すっごく可愛いんだよ!?寝顔」
 あ……れ?ジョウイ、ベッドに沈んじゃった。
と、思っていたらがば!と起き上がって、僕の肩を掴んで叫んだ。
「か…可愛い?!」
「可愛いよー!こうね、ぎゅうってしたくなるの」
 ジョウイに納得してもらいたくて、僕は言葉通り、彼をぎゅうっと抱きしめた。
あれ?どうしたんだろう?顔真っ赤だ。
「……これで無意識なんだから……本当に……」
なんか、呟いてるけど……。
「ジョウイ、大丈夫?」
「あのね、リヴ」
「何?」
「そういう挑発は止めようね。朝から僕の理性飛ばさないように」
「理性?………あ……」
 ジョウイの言葉を聞いて数分後。今度は僕が真っ赤になった。
ああ、そうか、これ、挑発になっちゃうんだ。うう、考えなかった。
「それから、僕としては自分より君の寝顔の方がずごく可愛いと思う」
「えー?!僕?!それ、見間違いだよ、絶対!」
「……どうして、自分だとこんなに否定するのかな?」
「だって、僕、ジョウイみたいに綺麗じゃないよ?」
「綺麗……そうくるか」
「うん!大好きだよ、ジョウイの顔」
「顔だけ?」
「他も全部!!」
「じゃあ、全部好きな僕と朝の挨拶しようね」
「え?さっきしたよ?」
「言葉じゃない方」
 ジョウイはそのまま僕を腕の中に引き寄せた。えっと、これって――もしかして?!
「わー!ジョウイ!!待った!」
「待った無し。責任取るように」
「ずるい!!」
 叫んだけれど、結局負けて。
 別にいいけどね。大好きな人との挨拶だから。


                                                END