いっぱい書く!

教室通信122号(平成16年6月)より

 一つの展覧会で、作品を仕上げるのに300枚書く。これは、大人の方の展覧会での合言葉です。
 字がうまくなりたいと思ったら、いっぱい練習するのは当たり前です。でも、どうして?と考えたことはありますか。
 たくさん練習していると、腕がなめらかに動くようになって、スムーズに書けるようになるのは、誰でも想像がつくことです。ですがそのためにいっぱい書こうと言っているのではありません。書いて書いて、飽きてくるけど、もっと書いて、それでもうまくできなくて、筆を放り出したくなる。でもやっぱり書くしかないと思って、もう1回、筆を持つ。いったい何をやっているんだと、なかばやけになって書く。
 そうです。そのくらいの気持ちになって書かないと、いい字は書けないのです。やけになって書くために、いっぱい書くのです。それが何より大切なことです。
 小学生以下の方にはちょっとむずかしいでしょうね。やけになって書くというのは、めちゃくちゃに書くというのとはちがいます。はじめは、字の配置や、形、筆づかいをよく守って、お手本のとおりになるよう練習します。すぐにはできないですから、できるようになるまで、何枚も書きます。
 やっているうちにうまくなってきますが、やりすぎると、疲れてなげやりになって、かえってだめになることがあります。特に小さいお子さんはそうです。私はそれがわかっていますから、その手前で「あと○枚」と言って、一番いい作品ができるようにお教えしています。
 大人(高校生以上)の人達がやっていることは、その先のことです。だから300枚なんてことになるのです。いい作品とは、書く人の魂が乗り移った作品です。それはいっぱい書かないとできないのです。皆さん、そこまでがんばってください。

「もどる」