石の上にも三十年?!

教室通信192号(平成28年2月)より

 高翔書道教室は昭和63年開設ですので、間もなく30年になろうとしていますね。皆様のおかげで、ここまでやってくることができました。感謝、感謝です。
 その間、私個人にもいろいろなことが起こりました。脱サラはそれより前にしていたわけですが、生徒さん0人から始め、結婚し、子供ができ、自身の考え方もずいぶん変わったと思います。どなたにも、字には生き様が表れます。生き方に魅力がないと、字にも魅力が生まれません。時間をかけることが第一です。「石の上にも三年」とは言いますが、三年ではちょっと…。三十年は必要と思います。
 なぜでしょうか。皆さんは筆を持ち一生懸命になって書いておられますが、それは今の自分の想いを形に表現しようとしています。「こういうのがいいのだ」という一つの考えに依っています。それは正しいものの、多くは唯一つの見方に依っているのです。それが、こういう見方もある、ああいう見方もある、となってくれると一つ上の段階のレベルの字になります。魅力が出てくるのは、そうなったときなのです。
 私が二十代のころの作品を取り出して見てみますと、「なんて下手なんだろう」と絶句します。そのころとは比べ物にならない、生き方・見方を今しているからなんですね。ある時の自分を、ぽいっと遠くに放り出して、全く別の視野から自分を見ている、そんな事ができるといいのです。それには、人の子の親になるくらい、one generation、つまり三十年の歳月をかけなくてはだめですね。受験・就職・結婚・子育て等を大いに経験してください。
 情報化社会で進歩が速くなり、三十年我慢することが難しい時代になっています。書は伝統文化であるだけに、同じことをじっと我慢することが必要です(その中でも進歩はあるのですが)。私に言わせていただければ、書はそういうことをさせてくれるのが良さなのです。さあ、がんばりましょう!

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