教室設立30周年

教室通信205号(平成30年1月)より

 昭和63年3月、今の中央林間教室のすぐ近くのワンルームマンションで、高翔書道教室はスタートしました。今年3月で設立30周年を迎えます。ここまでやって来られましたのも、皆様のお蔭。感謝、感謝の気持ちでいっぱいです。
 その間、バブルがはじけ、平成大不況、IT革命と、時代は大きく動きました。伝統文化と言われる書ですから、あまり変化はないと思われがちですが、調和体運動など、書の世界でも変化は起きました。それでも、私は書道馬鹿なので、一心不乱にいい字を書くことばかり追い求めてきて、今思い起こしてもそれがよかったのではと感じています。
 小学生や小さいお子様達でさえ、様子はずいぶん変わったなと感じます。30年前は、ほのぼのとしていました。周りのものが全て宝物で光輝いて見え、何をやっても楽しくて仕方がないという感じでした。今はほとんどの方がスマホを持っていて、入ってくる情報を如何にして処理するかに心を奪われているようです。それでも、墨を含ませた筆で白い紙に向かうというスタイルの時は、上手に字が書きたいという想いだけは変わらないですね。なぜなのでしょうか?上手な字への憧れは皆持っているという、日本人の血なのではないでしょうか。
 一方で、上手に書くということはほんとうに難しく、わかっているのに何でできないのだろうと、どなたも感じておられるだろうと思います。人は非力で、自分を客観的に見ることができないということなのです。
 字の上達は、簡単ではありません。かけた時間だけ上達すればいいのですが、私の経験で見てもそうではなく、全く効果が出なかったり、逆に以前より下手になることも現実にあります。それでも急にうまくなることもあるので、継続して筆を握っていなくてはなりません。その上昇の時を私が見逃さずぱっとつかんで、引き上げる。30年、それをやって来たように思います。誰でも、「石の上にも三十年」の気持ちで、時間をかけることが必要なのです。
 時代の変化が大きくなった分だけ、じっと我慢して鍛錬するということができにくくなりました。幸い、書がスタイルを変えなかったので、自分の通って来た道筋を眼で追う拠りどころとなりました。作品が形となって残ることは大きいですね。
 では上達するにはどうしたらいいのでしょうか。私は、字は頭でなく気持ちで書くものだと思っています。書きたい、何としても書こうとする気持ちが、手を動かすのです。いくら頭できれいに書いても、そんな字を人は見て感動しません。書くという気持ち、気迫が手を動かし、心を揺り動かす字を生み出すことができると思います。とにかく筆を執り、1枚でも多く書く。するとここはこうしたらいいと次の想いが湧いてきて、また1枚、また1枚…となっていきます。ただ書き続けてもだめで、できれば書いたものを壁に貼って眺め、日を変えて頭を冷やし、また書く…の繰り返しです。そのくらい時間をかけないとだめなのですね。30年かけて、そのことがわかりました。
 教室の皆様、毎週毎週休まずに通ってきて、ほんとうによくがんばっていますね。その継続がほんとうに大切だと思います。小学生だった方が社会人になってしまったということがたくさん起きている教室です。そのくらいの気持ちで、これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。

「もどる」