アンケートに答えよう!充流×伸吾編
「頼む!」
と、言われても……。
パンっ!と両手を叩いて俺を拝む渡辺に、どう、返答すべきか悩んでしまった。
俺一人に対しての依頼でも悩む内容なのに、充流と二人じゃなきゃ駄目だ、と言うのでは、尚更即答なんか出来ない。
頭の良い渡辺なら、その位読んでいると思うんだけどなあ。
「お前の欲しがっていた新作ゲームと食券二週間分でどうだ!?」
「どうだって――あのなあ……」
お前と言い、他の連中と言い……俺はゲームと食事で何でもする男だと認識してないか?!
そ、そりゃあ、しないとは言えない。でもな、訳の分からん内容にOK出さなきゃいけないほど、餓えてないぞ!?
「充流が了解したらな」
もう、こうなったら充流に一任しちまおう。俺一人じゃ、難しくても充流と一緒なら何とか乗り越えられるだろうし。
「よし!言ったな!藤井がやると言ったらやるんだな」
俺の台詞に、にんまりと笑う渡辺を見て嫌な予感を感じた。……もしかして、墓穴掘ったのか?俺?
「先に藤井に聞いたんだよ。そうしたら同じ事、言ったぞ?『伸吾がやるって言ったらね』だとさ」
「げっ!?」
「と、言う訳で、後はよろしく!」
立ち尽くす俺の肩を軽く叩いた後、渡辺は何処から取り出したのか、一枚の紙を俺に渡すと、意気揚々と校舎へ戻って行った。
校舎のパソコン室にいた充流を寮の自室までひっぱって連れてきた俺は、渡辺の言っていた事を問い質した。
「アンケート?うん、言ったよ。伸吾がやるならいいよって」
「み〜つ〜る〜」
がるる、と、唸る俺に充流が笑う。
渡辺が俺達に頼んで来たこと、それは緑桐BOOKMAKERに載せるゴシップ記事への協力だった。
「【噂のカップルに聞きました!萌え度チェック!】だぞ?!アンケートの内容は!」
いいのか!?と、詰め寄ると充流は、俺が赤面するような台詞を真顔で言ってくれた。
「だって、馬鹿正直に書かなくて良いって言うし。伸吾の虫除けにいいかなぁって思ったんだ」
「――あのなあ……」
思わないでくれ。頼むから。
「まあ、そう落ち込まないで。食券、1ヶ月分にさせたから」
「へ?」
「だから、渡辺に言われなかった?アンケートに協力する代わりに見返りを出すって話」
そう言えば……言ってたな。え?あれ?――ってことは!そうだよ!1ヶ月分の昼食代が浮くことになるんだ!
「充流!」
嬉しさのあまり、思わず抱きついた俺に、充流はにこりと笑って、よかったね、と言った。それから
「じゃあ、アンケート終らせちゃおうか。ここでいいよね?」
俺の持っていた(というか、持たされた)アンケート用紙を机に広げた。
「正直に答えなくてもいいんだよな?」
念の為、確認を取る。はっきりとした内容は分からなくても『萌え』などという、怪しげな単語を聞けば、おおよその見当はつく。
「その点は、きちんと確認しといたから大丈夫。じゃあ、一問目ね」
にこにこと笑顔のまま、充流が言った一問目とは――。