アンケートに答えよう!充流×伸吾編

「はい」
僕は、昨日伸吾と一緒に書いたアンケート用紙を渡辺に差し出した。
「おお、流石に早い。サンキュウ――って、藤井、その手は何だ?」
何だ、ときたか。しらばっくれるつもりなのか、本気で忘れてるのか……前者だろうな、この場合。
「ふーん……そうくる?いいけど、別に」
渡辺達に対するカードなんて山のように持ってるもん。問題はその中のどれを選ぶか、というだけで。
伸吾の言う”怖い笑顔”を見て、僕が何を考えているか分かったんだろう。慌てて制服のポケットから、見返りの品を取り出した。
「怒るなよ、ちょっとした茶目っ気だって。約束の食券一か月分と新作ゲームの予約票。代金はちゃんと払ったから、後は発売後取りに行くだけだって、山内に言っておいてくれ」
「了解。じゃあね」
まだ何か言いたそうな渡辺に、さっさと背を向ける。そうでもしないと、また厄介事を頼まれそうだから。
僕は急ぎ足で、伸吾の待つ寮の自室へ向かった。


「伸吾、貰ってきたよ」
「やったーっ!食券とゲーム!」
僕から見返り品の食券と予約票を受け取った伸吾は、ご満悦の表情でベッドに転がった。
伸吾の嬉しそうな顔を見れて、僕も嬉しいけど、食券とゲームに負けるのはちょっとなぁ……。
「充流」
「ん?なあに?」
少しだけため息をついた僕は、寝転がったままの姿勢で伸吾に呼ばれた。
「もうちょいこっち」
「?」
何だろう?
不思議に思いつつも、伸吾の言う通り近付くと、よいしょっと起きた伸吾にぎゅーっと抱きしめられた。
「――伸吾?」
「俺は何とも比べてないからな、お前を」
だから、俺を信じろ。
ぽつりと呟かれた言葉に、さっきの落ち込みはすっかり消え去ってしまった。伸吾の凄い所って、こういう所だと思う。
「……ごめん、少し拗ねちゃった」
「拗ねるのはいいけど――頼むから、その復讐で俺をベッドの住人にするのは止めてくれよな?」
真剣な表情で言う伸吾に、思わず笑ってしまう。昨日、宣言通り、伸吾を満足させようと張り切る僕を必死で宥めたんだよね。
そして、今日もリベンジを止められちゃった。残念だなあ。
「笑うな!」
「ごめん、ごめんって。じゃあ、我慢する代わりに明日、部活付き合って」
「おう!それなら幾らでも付き合えるぞ」
夜の甘い付き合いもいいけど、昼の明るい付き合いもいいよね?
伸吾を抱きしめながら、そう思った。


fin

←Q.5    top→