■第12章 永遠の愛
あれから寮に戻って僕の部屋に伸吾を招いた。
すぐにでも色々と話したい事があったけれど『此処より自分の部屋に戻ったほうが、お互いにじっくり話も出来るのでは?』と、瞳先生が進言してくれたので、そうする事にした。
確かにあの場所では誰がいつ来るか分かったものではないし………
僕のベッドを椅子代わりにして伸吾を座らせて、自分はその隣に腰掛けた。
瞳で伸吾を促すと、やがて彼はポツリポツリと、今までの事を話始めた。
「前……3月の始め位に、白鐘さんと充流が一緒に居る所を見たんだ。それで、その白鐘さんと充流がキス、している所を見ちゃって……」
「うん………」
「その後、卒業式の時白鐘さんが充流を連れて行っただろう?」
「そうだったね」
「それを見たとき……俺、充流が好きだって気が付いたんだ」
そこまで言うと伸吾は、また涙を流した。
「諦める気でいたんだ、きっと充流が俺の気持ちを知ったら苦しむと、思って。だけど駄目だった」
「ごめん、伸吾ごめん……」
「違う、充流が謝る必要なんか無い。ただ充流に気持ちを知られるのが、怖かった」
君が苦しむ姿を見たくはなかった………
透明な雫で、頬を濡らし静かに泣く伸吾を僕はそっと引き寄せた。
すると何の抵抗も無く、その華奢な身体は僕の腕の中にすっぽりとおさまった。
更に抱き込むと身を摺り寄せるようにして伸吾は僕の胸に頬をあてた。
その事実に僕はこの上ない幸福を感じていた………
君の目も唇も、髪の毛一筋すら、僕のモノ。
君に触れていいのは、この世で僕一人………
伸吾の頤に指を掛け顔を上向かせると涙に濡れた彼の顔に幾つものキスの雨を降らせる。
伸吾はちょっとくすぐったそうに身を捩ったが抵抗は、しない。
ホンの少し躊躇しながら唇にキスすると、一瞬驚いた顔をしたけれどすぐに瞳を閉じて僕に身を任せてくれた。
愛しい………
僕は逸る気持ちを抑え伸吾を今一度抱きしめた………
あの後、僕たちはお互いに抱きしめあって眠った。
ホントは凄く伸吾を抱きたかったけれど、環先生から『無茶をするな』という厳命があった為ぐっと自分を抑えた。
でも………伸吾を抱ける時が来るのが待ち遠しくて、同時に怖い。
伸吾を壊してしまいそうだ。
そんな話を伸吾にしたら、彼は首まで真っ赤になりながら、蚊の泣くような小さな声で呟いた。
「充流だったら、構わない」
その言葉が、僕をまた幸福にする。
結構周りの皆にも心配をかけてしまったから、僕と伸吾は友人達にはある程度の報告を、した。
そうしたら意外な事に皆は『そんな気がした』と言った。
僕ですら気が付かなかったのに、どうして皆が伸吾の気持ちに気がついたの?
「………僕らはともかく藤井に何の相談もしないなんて不自然すぎるからな」
友人達を代表して、秋山がそう述べた。
なるほど……
そう思いつつ伸吾を見ると彼はぷいっと顔を背けた。また耳まで真っ赤だよ?
ねぇ伸吾。僕はね永遠なんて無いと思っていたんだ、そう思いたかったのかも知れない。
君を愛して、苦しんで、それが永遠に続くかと思うとどうしようもないやるせなさが僕の胸を押しつぶしそうだった。
多分僕は逃げたかったんだ、自分の気持ちから。
でもね?今は違うよ。僕は永遠を確信しているんだ。
これから先、また僕も君も苦しむ日が来るかも知れない。
だけど僕は君を死ぬまで愛し続けるだろう。
僕の心は永遠に君のもの。
永遠の愛……
ありきたりな言葉かも知れないけど、僕は君にその言葉を捧げたい。
君が僕に全てを捧げてくれたように、僕の全ても永遠に君のものなんだよ、伸吾………
(完)
2003.10.12